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「いやぁ、いい天気だ! 冒険日和って感じだな!」

セイルが、森の中を歩きながら嬉しそうに言った。
その後ろをガルゥ、そしてしんがりを何度も転びながらソラがつづく。

「ちょっと待ってよ! 足をすりむいて痛いんだから!」

ガルゥとセイルが止まって振り返る。
ボロボロでクタクタのソラを見ながらどうした、とセイルが声をかける。

「さっきから何でお前は何度も転んでるんだ? ピエロにでもなりたいのか?」

違うよ!とソラは怒鳴った。

「セイルが着せた服が大きすぎるんだよ! 何度も裾を踏んで転ぶし……最悪だ……」

我慢しろ、とセイルはソラをなだめた。

「お前のあの服はピラピラしてるからな。
あれなんか着てブリリアなんか行ったら、絶対凍えるぞ!
ブリリアではガルゥにも服着せるんだから、我慢しろ!」

えぇっ、とガルゥが言う。

「そんなの聞いてねーぞ!? ぜってー着ないからな!」

「鼻水だらだらで頭ガンガン、吐き気でげーげーで、毎日おかゆでよければ着なくていいぞ、ガルゥ」

「えーッ!毎日おかゆなんてやだよ、そんなの……」

「じゃあ大人しく服は着るんだな」

一行がまた歩き出すや否や、さっそくソラが転んだ。
よろよろとおぼつかない足取りで立ち上がろうとしているソラを、セイルが助け起こした。

「ちゃんとサイズがあったのがいい……町に着いたらちゃんしたの買ってよね……」

「あぁ、約束する。新しいの買ってやるから、それまでの辛抱な」

少し歩くと、一行は開けた場所に出た。

そこにはとてつもなく大きい巨木が根を張っている。
巨木にはうつろがあって、中はこぢんまりとした部屋みたいだ。
椅子みたいなキノコに腰をかけ、三人は休憩する。

「もう日があんなに高いね。もうお昼かな?」

「オレお腹がすいたぞ! 昼ごはん食べてーぞ!」

ガルゥは大声でわぁわぁとわめくと、ハラ減ったぁ〜とすぐにへばった。

「そーだな。結構ハラすいたしな。昼食にすっか。
オレは火をおこしとくから、ガルゥとソラは魚もどき釣ってきてくれないか?」

魚もどき、と聞いてガルゥが嬉しそうな顔をする。

「焼き魚かぁ! 考えただけで、ヨダレが止まんねーな!」

「ガルゥは食べれたら、何でも美味しいんでしょ?」

ソラの言葉に、ガルゥがおう!と元気よく答えた。

「じゃあソラ、さっそく釣りしにいくぞ! 善は急げなんだ!」

「じゃあセイル行ってくるね」

釣竿を持って川に向かう2人に、セイルがいっぱい釣ってこいよ! と手を振った。

草原を進むと、2人はすぐに大きな湖に出た。
水は青く澄んでいて、魚が泳いでいるのが見えるぐらいだ。
しかし湖は浅そうに見えたが、足を入れてみると結構深かった。

わーぉ! と辺りを眺めまわしてたガルゥが、はしゃぎながら言う。

「ここだったらいっぱいお魚さんいるぞ! ソラ、さっそく釣ろうぜ!」

湖の縁にあった大きな石にちょこんと乗って、ガルゥは釣りをし始めた。
ソラもガルゥの側に座ると釣りをする。

それから数分経った。日はもっと高くなって、いまでは真上にある。
魚がいっこうにこず待ちくたびれたソラが、イライラと足を踏み鳴らす。

「釣れないね」

「まだまだこれからだぞ。ソラはせっかちだな。お!」

ガルゥが短い声とともに、ぐいと釣竿を引く。
釣り針には見事に大きな魚もどきがかかっていた。

釣り針から魚をはずしながらガルゥが得意気に、にんまりと笑う。

「へっへー! オレ上手だろ!」

「まだ一匹じゃないか。すぐに逆転してやるよ」

それから何十分か時間経った。
ガルゥのバケツは魚でいっぱいになってきたが、ソラのはまだ一匹もいない。

「釣りって結構難しいんだね」

何度もエサだけもっていかれたソラが、むっと顔をしかめた。
そんなソラを見て、ガルゥがギャハハとひざを叩いて笑う。

「ソラは早く引きすぎなんだぞ。
ちゃんと魚が食らいついてから釣らなきゃ、駄目なんだぜ」

「そんなこと言ったって……おぉっ!?」

ぐいと引っ張られてソラは慌てる。
湖面を見れば、大きな魚が釣り針に食らいついていた。

「ガルゥ! これすっごく大きいよ! 引き上げ切れないっ」

「待ってろソラ! 今加勢すっから!」

「早くしてよって、わぁーーーッ!!」

魚に勢い良く引っ張られ、ソラはじゃぼんと湖に落ちた。
服がまとわりついて重たく、水面に上がれない。
ジタバタしていたソラは、ふと、大きな目玉と目が合った。あの魚だ。
魚は、とてつもなく大きい。そして、何故かこちらをずっと見ている気が……。

「だぁーーーッ!!」

水面にとび魚よろしくに水しぶきを飛ばしながら、ソラが顔を出した。
手足をがむしゃらに振って、暴れている。

「どーしたソラ? まさか、泳げないのかぁ?」

ガルゥが笑いながら言う。
ソラは違うよ! と必死に否定し訴える。

「食われる! 魚に食われるってばっ!」

とたんに、ソラの後ろの水がもりあがったとおもうと、凄い水しぶきを立ててあの巨大な魚が躍り出てきた。
陽光がうろこに反射して、ギラリと光る。
その魚はぎざきざの歯がびっしりと生えた大きな口をあんぐりと開け、真っ逆さまにソラめがけて落ちてきた。

「うわぁーーーッ! 助けてガルゥ! 助けてってば!」

「ソラ!! ちょっと待ってろ、今助けっから!」

「待てないよって、わぁっ!」

ぐいっと背中が引っ張られてソラは驚く。
何がなんだか解らないまま陸に引き上げられたソラの前に、セイルが釣竿を持って立っていた。

「魚釣りも面白いがソラ釣りも中々だな。どうだねソラ君。俺に釣られた感想は?」

ソラは背中を見る。
背中の服に釣り針が刺さっていた。

「ちょっと強引で怖かったかな」

ソラは川の方を振り返る。
そこにはあの魚が悔しそうにこっちを見ているのが見えた。

「あーあ、こっちに着てから2回も川に落ちちゃったよ」

ブツブツと言うソラの背を、セイルが軽くぽんぽんと叩いた。

「焚き火を焚いたし、スープもできた。
ガルゥが釣った魚で十分だろーから、もう昼食にしよう。
早く体を暖めないとな」

3人は元の場所に戻った。
と、とたんに後数メートルってところでセイルが止まる。
おかげで後ろに続いていた2人は、顔面からセイルの背中にぶつかった。

「何だよセイル! イタズラだったら止めてよね!」

「違う、静かにしろ! あそこで誰かがオレ達のメシを食ってやがる」

セイルの背中ごしにソラも見る。
確かに誰かが焚き火の前でガツガツとスープを食べている。

「あれ人じゃねーぞ、モンスターだ」

ガルゥは鼻をひくつかせた。

「ピクシーかな。イタズラ好きだしなぁ……」

「考えても仕方ないよ、セイル。誰なのか確かめなくっちゃ。
もっと近くまで近寄ろう」

ソラ達は注意深く、じりじりと謎のモンスターに近寄る。

「いいか、危なそうな奴だったら一気に逃げるぞ。
さっきの川でまた集合だ」

セイルの言葉に2人はうなづき、再び謎のモンスターに向き直った。
が、そこには誰もいなかった。ガルゥがあれ? と目を丸くした。

「アイツがいねーぞ。どこ行ったん――」

急に後ろから服の襟首や尻尾を捕まれ、3人はぐい引っ張られた。
驚いてソラは後ろを振り向くと、あの人影がこちらを見ていた。

「デュ……デュラハン?」

甲冑の鎧を着たモンスターが、そこにはいた。
その白く長いひげをたくわえたモンスターは、いかにも! と言って唐突に挨拶をし始める。

「拙者は高貴気高き武家の次男坊、デュラハンでござるよ!
以後お見知りおきを、でござる!」

意外な展開にソラを含め他の2人も混乱する。
挨拶なんかするところからして、どうやら危ない奴ではなさそうだ。

「うーわ。めっちゃハイテンションなキャラだな。オレこういうの苦手……」

セイルがぼそりと言う。
確かに妙にハイテンションで変な人だ。

こっそり話をしていたソラとセイルの中に、デュラハンが急に割り込む。

「とくと見よ! 拙者のこのバスタードソードを!
腕の良い鍛冶職人に特別に打ってもらったでござる!
切れないものなど無いでござるよ!」

「別にお前さぁ、馬持ってないんだから、騎士が使う剣なんか持ち歩かなくてもさ。
それに武家のくせに刀じゃないのかよ」

「拙者は刀より剣が好きでござる」

「なんか分かんない奴だぞ」

混乱するガルゥを見て、ソラがこそっと耳打ちをする。

「わかったら最後だよ。メタルナーと話してるの同然だもん」

「失敬な! 拙者はメタルナーではなくデュラハンでござるよ!」

耳ざとく聞きつけたデュラハンが、うおーッと怒って剣をぶんぶんと振り回した。

「おいコラ! 危ないだろ!! お前がデュラハンだろうがメタルナーだろうが、どうでもいいっつーの!」

「どーでもよくはないでござる! メタルナーはメタルナー、デュラハンはデュラハン。
全然違う種族でござる! あんな変なモンスターと一緒にして欲しくないでござるよ!」

「オレにとってはお前は、十分変なモンスターだよ!」

「なんと言う屈辱! このデュラハン、立ち直れないでござる!」

デュラハンは鎧の隙間から、どっと涙――あればの話だが――を流しながら、その場にくず折れた。
おんおんと泣くデュラハンを見ながら、セイル達は途方にくれる。

「まぁ落ち着いてデュラハンさん。あんまり泣くと錆びるよ。
それよりどうして僕達の昼食を勝手に食べたりしたの?」

本題に入ったソラに、デュラハンがおお、と言って向き直る。

「それはでござるな、話せば長くなるでござる……。
拙者は今日修行に身を打ち込んでいたんでござる。それで気付けば腹がすいていたでござる。
どこからともなく美味しそうな匂いがしてでござってな、うっかり食べてしまったでござるよ」

かーっかっかっかっ! と笑うデュラハンに、セイルがおい! と怒鳴る。

「かーっかっかっかっじゃねーよ! 何オレ達の食事を勝手に食ベてんだよ!」

「その事でござるが、心配後無用でござるよ」

デュラハンは、ちっちっちっと人差し指を左右に振ると、胸をどんっと叩いた。

「このデュラハン、お礼として死ぬまで御前殿たちの仲間として、旅をすることに決めたでござる!
御前殿たちはここにあった荷物の内容からして、旅をしているご様子。
旅といえばノラモンとかが出てきて危険と隣り合わせ。でも拙者がいれば大丈夫でござるよ!」

「えっ!? 仲間として旅をするって、ついてくるつもりなの!?」

「そうでござる! 売った恩は忘れても、売られた恩は忘れないものでござる。
御前殿たちは拙者の命の恩人! 誠意を尽くしてお守りするでござる!!」

「おぉ! 仲間、仲間! 仲間が増えたぞ、セイル!」

「喜ぶなよガルゥ! つーか、勝手に人の荷物まで物色したのかよ! そんな奴仲間にしたくねーよ!」

「照れ隠しにキツイ口調で拒むなんて、御前もおちゃめでござるなぁ。
照れることなく大いに喜ぶといいでござるよ!」


かーっかっかっかっと笑うデュラハンは、何故か憎めない。
まぁこんな仲間も楽しいよな、と思いながらも楽観的なデュラハンを見ているソラの顔は苦笑していた。