今日は楽しい夏祭り。
露天立ち並ぶ夏祭り。
そんな日は浴衣を着て下駄を履き、うちわ片手に家を出る。
ものなのだが。
「暑い……」
「お祭りって、うきうきするわよね、兄さん!」
仕事帰りの夏の夜。
ダッジとウィオラは祭りに来ていた。
ダッジの仕事場、工房は、夏でもキンキンに冷えており、アイスも溶けない。
その工房の作業着は、長袖、長ズボン、おまけに襟がぴしゃりとしまっている。
工房では暑いとは感じないが、外に出れば暑くて仕方がない。
そしてなにより、ういている。
「あっ兄さん! 金魚すくいをやってるわ! やりましょうよ!」
ウィオラに袖をぐいぐいとひっぱられながら、ダッジは露店へ向かう。
本当なら帰りたいのだが、妹が楽しそうにはしゃいでいるので、帰りたいとも言えない。
「いらっしゃい!」
露店の店主が景気よく挨拶する。
茶色い髪の、見覚えのある姿。
「あっ! ダッジさんにウィオラさん!」
露店の店主は、コルトだった。
「コルトさん、どうしたんですか? お店なんて開いて」
思わぬところで会えたことに喜びながら、ウィオラが訊ねた。
へへ、とコルトが後ろ頭をくしゃくしゃとしながら、恥ずかしそうに照れる。
「いやぁ、モンスターを修行に出すお金が無くって……。
こうやって、こつこつ貯めることにしてるんですよ」
「大変だな」
ダッジの言葉に、コルトはいいえ、と両手を振る。
「お店を開いてみるのも楽しいですよ。
ではでは、金魚すくいやるんですよね。ポイはモナカと和紙と、どっちにします?」
「私は和紙にするわ。兄さんは?」
「俺はしない」
ええーっ! とウィオラとコルトが大声を上げる。
「どうしてしないの兄さん! 金魚すくいなのよ!」
「そうですよダッジさん! すくえたら金魚が貰えるんですよ!」
「止めろ! 叩くな!」
ダッジはポイで脇腹や向うずねをバシバシ叩いてくるウィオラとコルトの魔手から逃げた。
崩れたモナカがあたりに飛び散っている。
「ほう、金魚すくいをやるのか……」
聞き覚えのあるしぶい声。
ダッジは後ろを振り返えった。
そこには逆光を浴びて、パブスが立っていた。
ハッピ姿にねじり鉢巻。
「どうだ、ダッシュ君。かき氷をかけて、わしと競ってみないか。」
「ダッジさんですよ、先生」
名前を間違われた時点で、関わりたくないのだが。
しかし無理矢理、ダッジはパブスと金魚すくい対決をする羽目になった。
続く