いつもの時間。
毎日繰り返す、いつもの朝に起きる時間。
に、今日は寝過ごした。
「おはよう、リオ」
「おそよう、ファン」
ファンが居間に行くと、リオはとっくに朝食を済ましていて、お茶を飲んでいるところだった。
寝癖のついた頭を撫でつけながら――撫でつけてもいつも癖毛ではねはするのだが――ファンは向かい側に座った。
「ゴーレムはどこにいったんだろう? いつもちゃんと起こしてくれるのに」
「ゴーレムは、さっき、お医者さんに行ったの。昨日から、お腹が痛いって言ってたから……」
モンスターと話しが出来ないファンは、時々、こうしてリオがちょっぴり羨ましくなる。
自分もモンスターと話しが出来たら、もっとモンスターの気持ちや体調が分かるのに。
しかし、ゴーレムに腹痛なんてあるのか疑問だ。
「さて、僕も朝ごはんにして、はやくトレーニングを始めないと! だいぶ寝過ごしちゃったし」
ファンは立ち上がると、台所へ朝食をとりに行った。
かたん、という物音が台所からした。
ファンはハッとすると、さっと物陰に隠れた。
台所に、誰かいる。
泥棒だろうか。そういえば、最近この辺で空き巣が多いってチェザーレさんが言っていた。
――刃物を持っていたらどうしよう。
ファンは迷った。
しかし、そのまま逃がすわけにも行かない。
ファンは、ぱっと台所へ駆け込んだ。
台所にいたのは――
モンスター達だった。
「あ! こら! 何してるんだ!」
ファンの怒鳴り声に、ガルゥとモッチーがさっと振り返った。
毛並みが醤油で濡れている。
床には空の皿と醤油びんがごろり。
「やったな、ガルゥ、モッチー!」
皿には美味しく半熟に焼けた目玉焼きがのっていたに違いない。
が、その姿はどこにも無く、ガルゥとモッチーに美味しくいただかれてしまった後だった。
「人の目玉焼きを食べるなんて……って、あ!」
部屋の隅っこで、ほっぺをぱんぱんに膨らましてにやりと笑っているライガーがいた。
床に茶碗が転がっている。
「ライガー! どうして僕のご飯を食べてるんだ!」
叱ろうとするファンの横を、ライガーは余裕でさっとすり抜けた。
廊下でちらっと振り返っては、だっと逃げていく。
「ライガー!」
ファンは悔しさに地団太を踏んだ。
続く