「それでは、全員集合!」

パブスがピリリ、と笛を鳴らす。
うららかな春の日差しの下。しろつめ草の覆うグランド。
本当なら、ピクニックを楽しむものを。

――どうしてドッジボールなんかを。

ダッジは気乗りせず、パブスの開式の言葉を聞いていた。
右から左へぬけて行ってはいるが。

「ダッジボールは10対10でやるスポーツが、今日は選手が集まらなかったので――」

話がルール説明に入った。
ダッジは眉間にしわを寄せる。

今、変なことを言われた気が――。

隣のコルトとウィオラをうかがう。
気にしていない様子だ。聞き間違いか。

「――以上が、ダッジボールのルール説明だ。何か質問がある者は?」

――聞き間違いではなかった。

「パブス先生」

ダッジは挙手をした。

「ダッジボールとは何ですか」

「ド」ではなく、「ダ」。
パブスは待ってたとばかりに咳払いをした。

「ダッジ君が参加しているドッジボールのことだ」

パブスが、単純明快、とばかりに答えてのける。
少しも明快ではない。
ダッジの眉間のしわが心持ち深くなる。

「何ですかそれは」

「ダッジ君のドッジボール、ダッジボールという意味だ」

「ウィオラならウィオラボールですか」

「いや、適用するのは君だけだ」

つまり、気分でつけられた名前というわけだ。

「先生、賞品はあるんですか?」

ウィオラが挙手をする。
パプスはあるぞ、と胸を張った。

「勝ったチームには、賞品として、私からサイン入りのボールを渡そう」

別にいらない……と皆思ったが、誰も口にはしなかった。

「チームはあらかじめ決めてある。私とコルトのAチームと、ダッジ君とウィオラ君のBチームだ。
これがBチームのゼッケンだ」

パブスは水色のゼッケンをダッジとウィオラに渡した。
――少し小さい。
ダッジは着る時に、ビリッという不吉な音を聞いたような気がした。

ふとパブス達を見れば、桜色のゼッケンを着ていた。
コルトは違和感ない。が、問題はその隣の――

「モッチーカラーだ」

パブスは自慢げに笑った。

「君達はウンディーネカラーだ」

「ウィオラ! 勝つぞ!」 

ダッジはゼッケンを脱ぎ捨てると、聞かなかったことにした。



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